浅草六区の夕暮れ時、昼間はにぎやかな芸人さんの声が止んだころ。

路地をのぞくと、行き止まりに温かな光が見えます。

rDSC05713

東京蛍堂さんは、知る人ぞ知るアンティークの名店。

中々おもしろい商品がそろうだけでなく、気さくに話してくれる店主夫婦を含め、空間全体に充満する不思議な魅力に、吸い込まれてしまいそうです。

小さなワンダーランドには手作りのダンスホールも

入ってみると、これまた蛍のようなランプの群れ。

rDSC05411

すべて、東京蛍堂さんの商品です。

奥に行けば、半地下のダンスホールも。

rDSC05505

レンガも床も、店主夫婦が自分で仕上げた手作りのレトロ空間。

少し店内を見て回っただけで、異次元に迷い込んだような気分になります。

ここは確かに浅草なのか? 本当に21世紀の六区?

分からなくなってしまいます。

大正ロマンに誘われて

モノでいっぱいの店内には、ノイズの混ざった古い音楽が流れています。

iPhoneに保存した音楽データを、トランスミッターから古物のラジオ(もちろん売り物)に転送し、ラジオのアンプを通して音を出しているそうです。
rDSC05435

いかにもノスタルジックなメロディが、ノイズでぐっと雰囲気を増します。

「単なる懐古主義は好きじゃない。新しいものと古いものが融合して未来になる」と、店主の稲本淳一郎さんは言います。

東京蛍堂さんのテーマは大正ロマン。もちろん、前後の時代の骨董もありますが、往年の浅草を思わせるレトロな品がぎっしり。

古い帯締めやアクセサリ、

rDSC05422

ラジオや器械の類、

rDSC05490

rDSC05417

洋服、和服、rDSC05471

rDSC05484

仕掛けがむき出しになった時計、

rDSC05456

誰のものかよくわからない記念写真まで、

rDSC05508

とにかくいろんなものがあります。

一見、脈絡がないようです。

しかし、ほとんどの品物は鑑賞用ではなく、ふだん使いできたり、気軽に見られるという点で、共通するところがありそうです。

触れる・体験できる

東京蛍堂さんの大きな特徴は、なんでも触ってOKなこと。

rDSC05690

ショーケースにしまってある商品でも、気兼ねなく店員に声を掛け、出してもらってください。

rDSC05454

もちろん洋服を着てみたっていいし、三味線も弾けます。

rDSC05689

稲本さんが、ふだん仕事している席へ特別に座らせていただきました。

こちらは愛用のミシン(売り物)。

rDSC05637

「ここがおれの秘密基地」という稲本さんが見ている景色です。

rDSC05642

rDSC05643

蛍のような人とは? 稲本淳一郎さんのコトバ

不思議な空間をつくった稲本さん自身も、とても不思議な気分、けれど前向きな気持ちにさせてくれる方です。

rDSC05649

「どうして『東京蛍堂』にしたのですか?」と店名の由来を聞くと、

「東京に蛍はいないけれど、蛍のような人はまだいるんじゃないかと。そんな人たちのために、寺子屋のような勉強の場にしたかったんです。蛍がすめるような純粋な水が保てるように、東京蛍堂と名付けました」

rDSC05600

「蛍のような人ってどんな人ですか?」と聞いてみると、

「着物がほつれたら、昔の人は縫って直したんです。ぼくは、その心にキュンとするんです。今、ここでほつれた着物を扱っていると、蛍じゃない人は値切っちゃったり(笑)。でも、『気持ちを受け継ぎたい』と、喜んで買ってくれるお客様もいらっしゃいます。そんな方を見ると、ああ蛍だなあ、と」

rDSC05611

わかったような、わからないような……。でも、稲本さんをわかった風に紹介してもあまり意味はなさそうです。

短い時間、お聞きしたコトバをそのまま記録しようと思います。

―住み込みで新聞配達、社交ダンスのお相手、ヒーローの悪役、タクシーの運転手、デスメタルバンド、いろいろやったなあ

―自分が信じる仕事と、屋根があって食えるだけあればいいと気づいた

―日本の音楽は滝廉太郎で止まっている

―勉強しながら自分のルーツを探っている。研究材料として骨董が一番いいと思った

―古いものを見て、例えば女子高生は「超カワイイ」とか「ヤバイ」とか言って喜んでくれる。お母さんは「これ使ってた」と言い、おばあちゃんは「まだ家にあるよ」と。三世代がつながるんです。普遍的ないいものってつながるんだよな

―これからが大変なんですよ

―江戸時代の着物だとコスプレになっちゃうけど、大正ロマンなら和洋が融合する。今の時代にとっても合ってるんですよ

―電気はそんなにたくさんいらない。ウチにはたくさんかかってるけど

―どんな人生送ってきたんですか? まあ、ざっと、かいつまんで

―男なら直せ

rDSC05438

―ホントはバイクをこのあたりから出動させたいんですよ。ここがバカっと開いて、疾走していく……

 

明るくて、笑顔のステキな奥様との、なれそめ話も楽しいです。ぜひ、お店に行って聞いてみてくださいね。

rDSC05665

東京蛍堂の営業時間、アクセス

店名:東京蛍堂

電話:03-3845-7563、または090-5438-4223

営業時間:11:00〜20:00

定休日:月・火曜定休・祝日は営業

住所:東京都台東区浅草1-41-8

東武スカイツリーライン・東京メトロ銀座線浅草駅から徒歩7分、つくばエクスプレス浅草駅から徒歩3分。