浅草のメインストリートのひとつ、雷門通りに2店舗を構えるそば店「尾張屋」さん。

食事時には、観光客と常連客が入り交じって、連日いっぱいになる人気店です。

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↑こちらは本店。

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↑雷門から徒歩20秒の支店です。

浅草中がお得意さまの老舗そば店

尾張屋さんは幕末に創業した老舗で、浅草を代表するそば屋のひとつです。

本店1階奥には、年季の入った木の看板が。

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これまた歴史を感じる「浅草寺御用」の看板も。

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昔から、境内へ自由に出入りして商いすることを許されていたそう。いまでも毎月18日の浅草寺の縁日には、そばをお供えしていると言います。

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(本店2階の客席)

浅草の「顔」とも言える有名店で、たくさんの観光客が訪れる尾張屋さん。

と同時に、古い浅草っ子たちも、足繁く通う地域密着のお店でもあります。

有名な和菓子屋の店主、劇場のオーナーに、工芸品店の大だんななど、浅草のガイドブックに必ず載る名店の方々がお馴染みです。

演芸場で高座を終えた落語家、浅草公会堂や木挽町の歌舞伎座からの役者衆、両国から力士もやってきます。

とはいえ、立ち寄りがたい雰囲気はありません。初めてでも、安心して入れるお店です。

大量のかつお節で毎朝ダシを取る

では、主役のそばをじっくりレポートしましょう。

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天ぷらそば1400円(2016年4月11日から1500円)です。

そばが出てきた瞬間、漂ってくるかつおダシの香り。最近流行の魚貝ラーメンのように強烈な香りではなく、ふんわりと鼻先を漂うようなやさしい香りです。

毎朝一斗缶3個分という大量のかつお節を使用し、90分間じっくり煮詰めてダシを取ります。

昆布も煮干しも入れません。厳選した鹿児島・枕崎産の本かつおだけです。

伝統のつゆはキレが抜群

つゆを一口含んで、最初に主張してくるのはかつおのうま味。

ダシを引き立てる薄味のしょう油、その後にほのかな甘さと酸味がやってきます。

かえしは、しょう油とみりん、砂糖のみのシンプルなもの。

昔ながらの製法でつくられた伝統のかえしです。

もちろん、保存料や化学調味料は使用していません。

もりそば600円(2016年4月11日から700円)のつゆ。

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甘さ控えめで後味は爽やか。キレのあるつゆです。

コシとのどごしの二八そばは店内で毎日製麺

そばは、直径2mmほどの細打ちで、うどん粉2:そば粉8の割合で打った二八そばです。

しなやかなもりそばの麺。

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食べてみると、想像以上に弾力を感じました。

歯切れがよく、のどごし抜群のそばは、ツルツルお腹に入ってしまいます。

5分とかからず、一人前をぺろりといただきました。

そば粉は、墨田区の老舗製粉店「霧下そば本家」さんから、その時期一番おいしい国産のそば粉を、挽き立てで仕入れています。

石臼でゆっくりと挽いた一番粉のみ(そばの実を挽くと、中心から粉になります。一番粉は最初にできる粉で、でんぷん質の純度が高く、白くつるりとした食感の麺ができます)、それも尾張屋さんの特注品です。

そばとそば粉の老舗が、試行錯誤して完成したオリジナルのそば粉。どうやら、一番粉ならよいわけではなく、「挽き方」に大きなポイントがあるようです。

そばは、毎日店内で製麺しています。もちろん、気温や湿度によって、水と粉の量、打ち方を変えています。

厳選したそば粉と、熟練の職人技があって、心地よいのどごしが生まれるのです。

永井荷風が通った頃より、今がおいしい!

尾張屋さんを語るとき、必ずといってよいほど登場するのが「永井荷風が愛した」という枕詞。

映画館やストリップ小屋などがある「六区」へ遊びに行く際、尾張屋さんによく立ち寄ったそうです。

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現在の六区はこの通り。最後のストリップ劇場「ロック座」は、いまなお健在です。

そんなエピソードを知ると、聞きたくなってしまうのがこの質問。

「永井荷風が通っていた頃と同じ味なんですか?」

女将の田中美実さんいわく、

「今のおそばのほうが、絶対においしいですよ。そば粉を保管したり、輸送する環境が格段によいですから」

老舗の味を守りつつ、進化を続ける日本そばなのです。

香り高い特注のごま油

そばと並ぶ尾張屋名物が天ぷら。天ぷらそばに乗っているのは、全長約20cmという大きなエビ天です(天丼1500円も人気商品)。

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人気の秘密は、ボリュームもさることながら、特注のごま油だといいます。

家庭にあるごま油は、赤茶色のイメージがありませんか? 尾張屋さんのごま油は、サラダ油のように黄金色で澄んでいます。

食べてみると、さっくり揚がっていて、しかも脂っこくない!

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天ぷらが、どっぷりつゆに浸かっているのに、油がさほど浮いていません。

余談ですが、体験じゃぱんの事務所は、尾張屋さんの向かいにあります。

お昼時にお店の前を通ると、ごま油のいい香りがして、猛烈に食欲がわいてくるのです。

特別に調合されたスパイスとは?

さて、もうひとつ大切な尾張屋さん仕様の品があります。テーブルに置いてある七味唐辛子です。

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同じ浅草の老舗で、日本三大七味とされる「やげん堀 七味唐辛子本舗」さんから仕入れています。

本来、七味唐辛子には、唐辛子/焼唐辛子/けしの実/麻の実/粉山椒/黒胡麻/陳皮(乾燥させたみかんの皮)が入っています。しかし、尾張屋さんの七味は、つゆとの相性がよくないという理由で、粉山椒が入っていません。

やげん堀さんの七味唐辛子は、とてもよい香りなので、おそばにかける前に感じてみてはいかがでしょうか。

本店2階には4横綱のサイン入り手形

2階席では、千代の富士、北勝海、大乃国、旭富士と、平成初期の同時期に活躍した4横綱の手形&サインが見られます!

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中央の「翔」の字は、当時の幕内最高位の行司・第28代木村庄之助の筆。

大相撲のオールドファンなら、盛り上がること間違いなし! 尾張屋本店 店長の高田さんも、この笑顔です。

アクセスとお問い合わせ

尾張屋さんは、雷門通りに2店舗を構えています。

ランチタイムは特に混雑するので、少しでも時間帯を外して行かれることをおすすめします。

支店は雷門から徒歩20秒の好立地。本店は、支店から雷門を越えて2分ほど歩いたところにあります。

【本店】

住所:東京都台東区浅草1-7-1

アクセス:東武・東京メトロ・都営地下鉄浅草駅から徒歩5分

電話:03-3845-4500

営業時間:11:30~20:30(ラストオーダー)

定休日:金曜日

【支店】

住所:東京都台東区浅草1-1-3

アクセス:東京メトロ銀座線浅草駅3番出口よりすぐ、東武・都営浅草線浅草駅から徒歩2分。

電話:03-3841-8780

営業時間:11:30~20:30(ラストオーダー)

定休日:水曜日